高齢者にも関係する腸腰筋トレーニングはアスリートにも必須だった
腸腰筋は転倒予防や、姿勢の改善、歩行動作の改善に効果的ということは知られていると思います。これは高齢を迎えた方だけに限らないということをここでお伝えしておきましょう。
アスリート、特に今回は陸上選手がなぜ腸腰筋トレーニングを欠かさず行うのかについて、高齢者の方にも大きく関係する部分があります。少し視点を変えてみることで高齢者の方にも重要性を理解してもらい、これからのトレーニングの励みになればと思います。
腸腰筋について
腸腰筋とは、腸骨筋と大腰筋(+小腰筋)の総称です。陸上選手の場合はこの腸腰筋をしっかりと分けて考えます。画像をみるとわかるように大腰筋のみが上半身と下半身を繋ぐ筋肉です。腸骨筋は下半身のみに付着しています。
腸腰筋の働きとは
腸腰筋は、腸骨筋と大腰筋に分類され、腸骨筋は、足を引き上げる動きです。膝を高く上げるイメージですね。腸腰筋は意識的に動かすことができる筋肉です。お尻のような大殿筋などは意識的に動かすことがむずかしいことが多く、そういった意味でも鍛えやすい筋肉と言えます。
筋肉はゴムのような性質であり、弾力性があります。これは腸腰筋も同じで、弾力性があればあるほど足を上げる速度が速くなり、弾力性を失えば失うほど足をあげるのが大変になるということです。
特に運動不足である高齢者の方であれば弾力性低下が著しくみられるので改善することでスムーズな足運びができるようになります。
陸上選手も大腰筋を鍛える
腸腰筋の筋トレをするメリット
①足の回転が速くなる
高齢者だけでなく陸上選手もに回転が速くなることは大切です。自転車のペダルを回転が速くなればなるほどスピードは向上します。同じ原理ですね。股関節の伸展、つまり足を後ろに伸ばしたところから次の前進までの筋肉の収縮が早くなることで足が前に出て速くなります。
筋肉はゴムのような性質で強く伸ばされれば勢いよく戻りますが、高齢者の場合はゴムというなの筋肉が緩んでいる状態の方が多いです。すると伸ばされて戻るまでのスピードが遅くなります。だから歩行スピード遅くなります。
②上半身と下半身の筋肉が連動する
連動性の中で特に大腰筋は、筋肉の中で唯一上半身と下半身を繋ぐ筋肉です。つまり腸腰筋をトレーニングするとうまく働きが増してくるので上半身と下半身の連動性を高めることに繋がるのです。
腕と足は別々の動きでありますが、歩行時に自然と腕が振られるのも連動している証拠。筋肉は基本的には全て繋がっていますが、加齢や運動不足によってそれぞれが機能せず、バラバラな動きになることがあります。
陸上選手も足を上げ、腸腰筋を意識して腕を振れるようになることがスピードアップへの到達法です。高齢者も同様に連動性を高め歩行機能を向上させましょう。
③体幹が強くなりブレが少なくなる
腸腰筋は、正しい姿勢を作るために必要な筋肉です。骨盤を前傾させるのに必要な筋肉であり、高齢者の猫背や円背のような姿勢を防ぎます。陸上選手であれば速く走るために下半身の力を前方向により強く発揮するための姿勢を作ることができます。すると体幹のブレは少なくなり安定した走りができるようになります。
④姿勢が良くなり、重心移動がうまくできる
姿勢を正しく保つことは体幹がしっかりし重心移動をうまくできるようになります。考えてみると直立姿勢は重心が垂直にかかり、階段に上るなどは重心が前にかかりつま先に力が入ります。また高齢者の場合、カラダに対して左右どちらかの傾斜があるとよろけてしまうことがあります。
しかし腸腰筋を鍛えることで重心が安定し左右前後のブレがなくなります。これは陸上選手も同じ。いかにブレずに安定した重心を保つかがポイントなのでトレーニングをする必要があります。
⑤着地が安定し力が発揮しやすくなる
着地が安定するということは陸上選手においても高齢者においても怪我の発生リスクを下げることができます。足の上げ方は3種類に分けられます。足首で上げる、膝で上げる、股関節で上げるの3つです。
例えばその場で足踏みをしてみましょう。足首や膝で動く人は着地面がバラバラになります。しかし股関節を使う、つまり腸腰筋をうまく使えると着地面が安定することがわかります。
股関節で足を上げられる人は引き寄せて力を抜くだけなので、同じ場所に戻ります。陸上選手も着地面が安定していないことで無駄が生まれタイムに影響します。
高齢者の多くは足首で歩いている人が多いです。すると重心の手前に足をつけば、つまずくことがあったり、転ぶことがあったりと危険です。腸腰筋で引き寄せる意識で走る、歩くことで自然と重心の真下に着地することになり、安定感が生まれます。